ただ、この道路、建設に6年位かかるんだって。ホントに万博に間に合うの?
ある人から海上の森のシデコブシが切られているという報を聞き、現地に向かいました。行ってみると、確かにシデコブシが無残に切り倒されていました。シデコブシは湿地に自生するモクレン科の樹木で、愛知・岐阜・三重の3県にのみ自生する東海地方の固有種です。環境庁が昨年度発表したレッドデータブックでは絶滅危惧種2類に分類されています。海上の森全域では一千株とも二千株とも言われますが、これは愛知県内では最大級の自生地で、厳重な保護を必要としていることは言うまでもありません。 現場は林道の右手で、常時流水のある小さな沢です。シデコブシは林道から2.3メートルの場所に数株あったことが確認されており、そのうち3株にはピンク色の標識がホッチキスで止められています。伐採されたのは、その3株以外のいくつかの株です。周囲を探すと、切断された多数のシデコブシの枝が散乱していました。それらの中には、葉芽が数個ついたままの株が見られました。枯れ木には芽が出ませんから、これはシデコブシが生きたまま切られたことを示す決定的な証拠です。通報者の話では、抜き捨てられた根っこつきの株もあったとのことですが、この日にはその株は確認できませんでした。何者かが伐採木を片づけたものと思われます。現場ではシデコブシ以外の伐採木も無造作に束ねられていました。 問題は誰がシデコブシを伐採したかです。現場の沢の数メートル奥にはボーリング調査があったことを示す赤い杭が残されていました。近所の人の話では、この夏ここで県道若宮−八草線のボーリング調査が行われたようです。ボーリング調査には大型の機材が使われており、それを現場に持ち込むために広い通路を確保する必要があります。伐採はおそらくその際に行われたものでしょう。ボーリング調査に直接従事する人が、シデコブシを見わける能力を持っている確率は極めて低いと考えられます。おそらく、それとは知らずに伐採してしまったのでしょう。予備的に行われるボーリング調査ですらこの体たらくでは、先が思いやられます。どれほど環境に配慮した工事を行うと約束していても、このように本工事以前の先行工事で踏みつけ、抜取り、伐採されては、たまったものではありません。有難い「アセス準備書」も現場の作業を行う人たちにとってはまさに百年の説法屁ひとつという奴で、そんな紙切れとは無関係に工事が執り行われているようです。 湿地開発の一番の被害者であるシデコブシにとっては、今回は最低の救済手段である移植の機会すらも与えられなかったことになります。これでは保護を訴えてきた我々としては、ますます危機感を深くせざるを得ません。調査なら何をやってもいいはずがありません。このように湿地の内部を深く傷つける行為は、たとえ調査でも許されるものではないはずです。担当者の猛省を促すとともに、作業者の十分な教育を求めたいと思います。 というわけで、今後も調査や工事の実態に付いてレポートしますので、よろしくお願いします。なお、上記の内容は私のホームページでも画像付きで掲載しましたので、ぜひ覗いてください。 ★★上杉さんより(HPアドレス:http://www.synnet.or.jp/UESUGI)★★ |